睡眠負債とは、米スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の初代所長ウィリアム・C・デメント教授が1990年代から提唱した概念であり、睡眠不足が借金のように積み重なることで心身が不調になるリスクが高まる状態を指します。

つまり、毎日の睡眠の不足分はそのまま蓄積し続けるという考え方です。

日本人は世界的に見ても睡眠不足の人の割合が多く、睡眠負債が溜まっているともいわれていますが、特に夏はよく眠れないという方が多いようです。

睡眠負債は夏に溜まりやすい?

 

株式会社ネオマーケティングが全国20〜60代の男女を対象に行った調査によれば、最も眠りが浅いと感じる季節は夏が圧倒的に多く82.2%、逆に、よく眠れる季節を秋と答えた人が58.4%という結果になったそうです。

 

ちなみに夏によく眠れない理由として多かった回答は「気温や湿度が高いから」「冷房で身体が冷えるから」などのようです。日本の夏は過度に蒸し暑いですから、これは当然といえば当然なのかもしれません。

さらに今年は、未だに収まる気配のない新型コロナウイルス騒動が、睡眠負債の蓄積に拍車をかけています。

株式会社ヒュプノスが10〜70代の男女約1000人を対象に実施したアンケート調査によれば、コロナ禍によって睡眠の質が下がったと答えた人は31%、睡眠時間が短くなった人は23%という結果がでています。

 

その理由として最も多いのが「コロナ関連のストレスや不安」と「生活リズムの乱れ」のようです。

ストレスや不安感は交感神経を優位にし、緊張状態を持続させますから、少なくともその間は入眠や熟睡が困難になってしまいます。ちなみに、夏の暑さもストレスの一種です。

 

また、生活リズムの乱れは自律神経がバランスを崩す要因になります。通常、夜間になれば副交感神経が優位になり自然に眠りやすい状態へ移行するはずが、生活が不規則になることで、自律神経がうまく機能せず睡眠障害につながる場合があるのです。

強烈な暑さによるストレスとコロナ禍での不安などが重なったことから、今年の夏は特に睡眠負債が蓄積した方が多かったのではないかと思われます。

 

睡眠負債を放置すると

もし睡眠負債が蓄積し続けた場合、どのような影響がでてくるのでしょうか。

慢性的な睡眠不足は心身に様々な悪影響を及ぼします。

まずよくいわれているのが、日常生活や仕事での作業効率の低下です。集中力が散漫になったり、判断力や記憶力が低下するため、どうしても100%の能力を発揮するのは難しくなり、ミスも多くなります。それでいながら、睡眠不足に慣れてしまっている本人はそんな状態をなかなか自覚しづらいそうです。

そのまま、睡眠負債がいわゆる債務超過に達すると、マイクロスリープと呼ばれる症状が現れるようになります。

マイクロスリープとは、短れば1秒以下、長ければ30秒程度までの睡眠にほぼ強制的に入ってしまう症状を指します。いつの間にかウトウトしていたり、眠気で一瞬カクッと頭が落ちたりする、あの状態です。つまりは脳がそれほどまでに疲弊し、睡眠を欲している状態というわけです。

その多くは、退屈な会議中であったり自宅でくつろいでいるときに起こりますが、車の運転中など気を抜けない場面で起こると大変危険です。

アメリカで実施されたある調査では、一日の平均睡眠時間が6時間未満の人は交通事故での死亡率が13%も高くなるという結果がでています。車以外でも、2017年には長野県の消防防災ヘリコプターがマイクロスリープが原因で墜落し、乗っていた9名全員が死亡しています。

また、健康面では、睡眠負債によって自律神経系やホルモン分泌が乱れることで、生活習慣病のリスクが高まることについて厚生労働省も警鐘を鳴らしています。

ほかにも、慢性的な睡眠不足はうつ病などの精神疾患の発症リスクを高める可能性があるともいわれています。

睡眠負債を解消するには?

 

睡眠負債というからには、休日にまとめてたくさん眠ればいいと思われるかもしれませんが、実はそれでは睡眠負債は解消できないとされています。

世界的な権威を持つアメリカの学術誌「Science」掲載の研究報告によれば、睡眠に関しては、体内時計のほか睡眠恒常性と呼ばれる機能が脳の異なった箇所で同時に働くという事実が明らかになったそうです。

また、睡眠恒常性とはいわゆる睡眠欲に関するものですが、それよりも体内時計のほうが優先されるということも判明しています。

つまり休日に長時間ぐっすり寝ようとしても「朝起きて日中は活動し夜眠る」という体内時計のリズムが優先されるため、それに沿わない分は極めて質の悪い、意味のない睡眠になってしまうというわけです。

結局のところ、睡眠負債を解消するには、体内時計に従い規則正しい生活を送りつつ、足りない分は少し早寝をしたり少し遅めに起床するなど、自身で調整しながら改善していくしかないようです。いわゆる、分割返済ですね。

そのためには、就寝前のスマホやパソコン操作、カフェイン摂取を控える、アロマやハーブティーで気持ちをリラックスさせるなど、寝付きを良くする工夫が必要な場合もあるかもしれません。

幸い、秋は睡眠に適した季節です。

夏の猛暑やコロナ禍に疲れた心身を癒すためにも、今一度、ご自身の睡眠について見直してみてはいかがでしょうか?

 

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