新型コロナウイルスの感染拡大が世界レベルで続いていますが、こういったなかで健康を保つために重要となるのが免疫力です。
病気全般にいえることですが、新型コロナウイルスについても、感染した場合に症状の度合いが患者本人の免疫力次第で大きく変わることが知られています。
免疫力を高めるためには、バランスの良い食事、充分な睡眠、規則正しい生活リズムが大切なのはもちろんですが、さらに「笑い」が有効であるということも医学的に認められているようです。
笑いの効果
笑いの健康効果について研究が始まったのは、アメリカのジャーナリストであるノーマン・カズンズ氏が1976年に出版した著書『笑いと治癒力』が発端とされています。
これは、発熱と激しい身体の痛みをともなう、不治に近い難病を笑いで克服したという闘病体験談で、これをきっかけに医学的な研究が本格化されたそうです。
日本でも、笑いの効果については様々な医療機関や大学が実際の実験や研究に基づく論文を公開しています。
大阪府立病院機構「大阪国際がんセンター」が2018年に行った実証研究によれば、がん患者約30名に漫才や落語を鑑賞してもらい血液を採取したところ、鑑賞しなかった側の同人数に比べ、全員に免疫細胞の増加が確認できたそうです。
また、日本医科大学「補完代替医療としての笑い」によれば、笑いの効果として以下を挙げています。
ストレスを鎮める
セロトニン神経の活性化
リラックス効果
幸福感
血糖値を下げる
免疫能アップ
笑いにより酸素が増えることで、コルチゾールの分泌が低下しストレスが鎮まるそうです。
ちなみに副交感神経系が優位になるためリラックス効果もあるとのこと。
また、脳内麻薬ともいわれるエンドルフィンやドーパミンが大量に分泌されるので、痛みが軽減されたり、自然な幸福感が得られるとしています。
血糖値が下がるというのは意外ですよね。これについては、笑うことでスイッチがオンになる遺伝子が関与しているそうです。
他にも、笑いを理解しようとすることで脳自体が活性化し記憶力アップや認知症予防に効果があったり、表情筋や腹筋、横隔膜などを動かすことによる運動効果もあるとされています。
対人関係においても、笑顔は印象を良くする効果がありそうですよね。
笑いで免疫力が高まるメカニズム
すでに医学的にも認められている笑いの効果ですが、そのなかでも今特に気になるのは、やっぱり免疫力ですよね。
笑うだけで免疫力がアップするならすごく簡単に思えますが、実際どのように笑いが作用しているのでしょうか。
笑うという行動は、自律神経を頻繁に切り替えさせます。
笑うときは交感神経、笑った後は副交感神経、という具合にです。
この切り替えが刺激となり、興奮として間脳に伝わることで神経ペプチド(免疫機能活性化ホルモン)の分泌を促します。
生産された神経ペプチドは血液やリンパ液を通じて全身へ行き渡り、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)に付着することで活性化させます。
NK細胞は、常に全身をパトロールしながらウイルス感染細胞やがん細胞を退治してくれる頼もしい免疫細胞です。
人間に本来備わる免疫機能のなかで初期攻撃を行う重要な役割を担っていますから、活性化すれば免疫機能が強化され、より強固にウイルスなどから身体を守ってくれます。
つまり、笑うことで自律神経が刺激され、免疫機能活性化ホルモンを分泌、それが免疫機能を高めるというわけですね。
生活に笑いとユーモアを
意識して笑いを生み出す、という行動は、人間だけに許された特権なのかもしれません。
笑い療法の父といわれるノーマン・カズンズ氏も、自身の難病を克服するため、日常のなかに意識して笑いの時間をつくっていたそうです。
といっても、特に難しいことをする必要はありません。周囲の人々との日々のコミュニケーションのなかで、ちょっとした冗談を言ってみたり、笑いに繋がりそうな失敗談を話してみたり、何気ないことで笑い合えればそれで良いように思います。
あるいはあまり人と話す機会がないのなら、お笑いのDVDやコメディ映画などを鑑賞して思いっきり笑うのもアリでしょう。
さらに積極的に笑いたいのなら、今話題の「笑いヨガ(ラフターヨガ)」なんてものもあります。これはヨガの呼吸法に笑いを組み合わせたもので、「笑うのに理由はいらない」をコンセプトとしています。
笑いヨガについては、Youtubeなどネット上にたくさん動画が投稿されていますが、そのコンセプト通り、本当に特に理由もなく楽しそうに大笑いしています。実際、作り笑顔でも笑いの効果は得られるそうです。
今後も油断ならない状況が続きそうですが、なるべく笑い、笑顔を絶やさないようにしつつ、ポジティブに生活を送ることを心がけたいですね。